マジコンの件

著作権違反幇助とか言う無茶理屈じゃなくて
普通に不競法で判決が出たのはいいことだと思います。


この件では普段から着目している小倉秀夫先生が担当されたようです。
http://benli.cocolog-nifty.com/benli/2009/03/post-5c91.html
判決文が無いので結局マジコンのどの部分が不競法に引っかかったのかは不明ですが
どうも

  • 「検知→制限方式」コピー禁止のフラグ(制御信号)が

  コピガキャンセラーを無効にする(マクロビジョン破り)

  • 「検知→可能方式」正規品を示すフラグ(制御信号)を

  MODチップで発生(DS破り)
の違いについての主張は認められなかったものと思われます。


私も不競法に「技術的制限手段」に関する項が加わったとき、これでカバーできるコピー防止機構は極めて限定されたものであると考え。
権利者側はこのザル法で満足なのかと、マクロビジョンさえ保護できればいいのかと疑問に思ったものです。
(実際フリーオなどは合法とされていますし)
だからこそDVDでは特許などでも縛っているわけで


従来より、電子機器メーカ側はこういった法は技術開発の阻害になるので反対の立場なわけで、「技術的制限手段」が限定されるようにロビー活動をおこなっていました。(今もダビング10とかで揉めていますよね)
ですので「技術的制限手段」とは、マクロビジョンなどの代表的なコピーガードに限定するために、長ったらしい定義が明文化された経緯がある以上、その拡大解釈は許されないはずであります。


そもそも「プログラムの記録を制限する手段」とある以上、
それはマクロビジョンのコピーガード信号やコピーワンスのフラグだったりするわけで、DSやゲーム機に一般的に備わっている「正規品認証手段?」は「プログラムの記録を制限する手段」では無いと思うのですよ。
(DSに備わっているのは「プログラムの実行を制限する手段」では?)
つまり、自主制作ソフトにはコピープロテクトがついていないのが当たり前で、それの実行を妨げることは「プログラムの記録(コピー)を制限」しているわけではありません。
よって、MODチップは「機能のみを有する装置」には当たらないと言うことになります。


よって、マジコンの現実的な用途の是非はともかくとして、自主制作ソフトを実行不能にすることを目的とするプロテクトは「技術的制限手段」に該当しないと言うのが法制定時の趣旨であったはずです。

「技術的制限手段」とは、電磁的方法(電子的方法、磁気的方法その他の人の知覚によって認識することができない方法をいう。)により影像若しくは音の視聴若しくはプログラムの実行又は影像、音若しくはプログラムの記録を制限する手段であって、視聴等機器(影像若しくは音の視聴若しくはプログラムの実行又は影像、音若しくはプログラムの記録のために用いられる機器をいう。以下同じ。)が特定の反応をする信号を影像、音若しくはプログラムとともに記録媒体に記録し、若しくは送信する方式又は視聴等機器が特定の変換を必要とするよう影像、音若しくはプログラムを変換して記録媒体に記録し、若しくは送信する方式によるものをいう。 (不競2条7項)

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さて、先生は続くエントリで
http://benli.cocolog-nifty.com/benli/2009/03/post-c1c2.html

 もちろん,NintendoDSのような「検知→可能方式」型の技術的手段を講じても,市井で行われるソフトウェアの開発に何ら差し支えないというのであれば,是非ともWindows7の正規バージョンで採用したら良いのだと思うのです。例えば,Windows7がインストールされたPC上では,MS社とライセンス契約を結んで提供を受けた特別な信号が組み込まれたCDまたはDVDからでなければソフトウェアのインストール作業等が行えず,「正規」のインストール作業の際にソフトウェアごとにMS社から割り当てられた特別な信号がPC上の特別な領域に書き込まれなければそのソフトウェアをPC上で稼働できないようにすれば良いのではないでしょうか。その結果,アマチュアまたはセミプロのプログラマーが,その作成したプログラムを,無料または安価で,オンライン上で公開するということが事実上できなくなり(公開しても構いませんが,誰もそれを実行できないので,公開する意味はなくなります。),自主製作ソフトを作成するということがほとんど無意味な行為となるとしても,「早熟の天才」たちはせっせとWindows7用のソフトウェアの開発に明け暮れるようになるとMS社として考えているのであれば,さっさとそうしたらよいのではないかと思うのです。

と述べられていますが、
それは流石に無いかなと思います。
iPhoneに限らずともPIC、旧ワンダースワンなど、そう言う環境はいくらでもありますし、MSがそのような制限を設けたらlinux陣営が喜ぶだけですので、ありえない仮定と言うほかありません。(MS-Officeのマクロも使えなくなりますしね)
一方、vistaからはデバイスドライバ類についてはMSは実際にこういう制限を設けているのも事実です。
しかし、MSはX-Box360用の開発環境を無償提供していますし、これはひとえに各メーカの自由裁量に尽きると言うことではないのかと思います。


また、自分もプログラマーの端くれで、シンクレアと言う半ゲーム機でプログラミングの入門をしたわけですがそう言った環境は現代ではありふれておりなにも数年で世の中から消えているであろうDSで活動する必要はありません。


ただ、小倉先生の言う「早熟の天才」とやらの実体は存在しないと思いますが、不競法の趣旨はこのような「早熟の天才」の行為(或いは単に技術開発)を制限しないように最大限に配慮したものであることは確かだと思われます。


まぁ、地裁だし